特集Vol.4:2014年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」を振り返る

コースの戦略性に翻弄されたバッバ・ワトソン、優勝ならず!初出場のデービッド・オーが無欲の勝利

 太平洋クラブ御殿場コースを舞台に行われた第42回『三井住友VISA太平洋マスターズ』は、日本ツアー参戦3年目で本大会初出場のデービッド・オーがツアー初優勝を飾りました。2014年のメジャートーナメント『マスターズ』チャンピオンであるバッバ・ワトソンは、好ダッシュを見せながらも御殿場コースの戦略性の高さに翻弄され、24位タイに終わりました。

※ 開催期間:2014年11月13日~11月16日

日米マスターズの初制覇へ向け絶好調のバッバ・ワトソンが参戦

 本大会の最大の関心事は、バッバ・ワトソンによる日米のマスターズ同年初制覇でした。マスターズチャンピオンの本大会出場は2011年大会のシャール・シュワーツェル以来7回目。ワトソンは前週の世界ゴルフ選手権HSBCチャンピオンズ(上海開催)で劇的な優勝を収めたほどの絶好調で、両大会制覇が期待されていました。
 練習日とプロアマ戦で御殿場コースをラウンドしたワトソンは、「美しい風景と素晴らしいコンディションに恵まれた中でプレーできるのは貴重な体験。2005年に参戦した当時はまだプロとしての経験が少なくて自信がなかったが、9年たって自分のゴルフも成熟したので良いプレーをしたい」とコメント。

 前年通算13アンダーで優勝したディフェンディングチャンピオンの谷原秀人は、「例年よりグリーンのスピードが出ておらず、フェアウェイも柔らかい気がする」と、前年の優勝スコアを上回る可能性を示しました。また、2010年(14アンダー)、2012年(15アンダー)と優勝して、「大好きなコースで一番楽しみな大会」と公言する石川遼は、PGAツアーでの経験を踏まえ、「僕が勝った時のスコアでは勝てない」とバッバ・ワトソンを意識して17、18アンダーを目標に設定しました。

好天候の初日、ワトソンは7バーディ。他3人が5アンダー67をマーク

 初日、注目のワトソンは谷原・石川との組み合わせで10番からスタートしました。時折り強い風が吹くものの、気温14.3℃、南南西の風5.8m/s(12時)の好天候。幾重にもギャラリーが取り囲む中、トレードマークのピンクヘッドのドライバーで豪快にフルスイングすると、フロントエッジまで約55ヤードのフェアウェイ中央にボールをランディング。米ツアー(2013~2014年)平均飛距離No.1(314.3ヤード)の実力を見せつける330ヤードを飛ばし、日本のゴルフファンの度肝を抜きました。
 その後、10番はパーながら、インは11、12、15番でバーディの3アンダー33。378ヤードの15番パー4ではドライバーショットをグリーン手前まで飛ばして楽々バーディを奪い、後半のアウトでは1番、3番、6番、8番の4ホールをバーディ、結果7バーディ、1ダブルボギーの5アンダー67でラウンドしました。ワトソンの他、藤田寛之と塚田陽亮、崔虎星の3人が5アンダー67をマーク。

 ワトソンを含め、好調な滑り出しに優勝スコアはかなり高くなると思われました。しかし、JGTO(日本ゴルフツアー機構)は年々ホールロケーションを厳しくしており、御殿場コースを設計した加藤俊輔氏も「晴天続きでグリーンのスピードは日増しに速まり、風向きと風の強弱にショットが影響されやすくなって難易度が増す」とコース戦略の難しさを示唆。
 初日7番(178ヤード)での唯一のダブルボギーについて、ワトソンは「単にイージーに打ってしまった」と答えましたが、打ち出されたボールが左からの風に影響を受けて右手前のバンカーに落ちたと推測されました。

風向きと風の強弱に悩まされ、2日目、3日目はワトソンを含む上位陣が総崩れ

 2日目も快晴で、気温が10.8℃と初日より低めながら南風4.5m/s。上位陣の好スコアが期待されましたが、藤田が69で回って通算8アンダーで首位、ワトソンは70で通算7アンダーの2位、崔と68で回ったオーの二人が通算6アンダーで3位タイとなりました。
ワトソンは7番でティーショットを右に外し、8番パー4では第2打が乗らず、13番パー3ではティーショットをショート。3つのボギーを「風が難しかったため」と評しました。なお、2日目のベストスコアはハン・リーの66で、14選手が60台でした。

 さらにムービングサタデーの3日目も朝から好天となり、気温12.2℃、南南西の風4.1m/s。2日目より好天ながら、上位陣のスコアは悪い方へ動きました。まずワトソンが1番でいきなりティーショットを池に入れ、さらに3パットでダブルボギー。初日、2日目と吹いていた右からの風に加えて正面からの風が吹き上げており、ボールが押されてより強いフェードスピンがかかり、フェアウェイ左の池に転がり落ちたと考えられます。さらに2番、3番もボギー、6番もダブルボギーでアウトは何と42。インは2バーディ、1ボギーの35で、通算2 アンダーの24位タイに後退しました。首位の藤田も3ボギー、1ダブルボギー、4バーディの73で6位タイへ。「追い風かと思ったら向かい風だった」と風向きの読み違えが原因だったことを語りました。
結果、4アンダー68で回ったオーが通算10アンダーでトップに立ち、1打差の通算9アンダーにリーと梁津萬(リャン・ウェンチョン)、2打差の通算8アンダーに武藤俊憲、呉阿順、3打差の通算7アンダーに池田勇太、藤田ら4人が連なりました。

スコアが伸び悩んだ最終日。手堅いゴルフでオーが初優勝に輝く

 最終日は若干雲が広がったものの、気温11.7℃、南風2.2m/s。最終日を迎えてトップは通算10アンダーのオー。アウト最終組のオーは1番でボギーの後、9番でバーディを奪うまで連続パー。梁も2ボギー、1バーディ。唯一、リーが2バーディを奪取して通算11アンダーでトーナメントリーダーとなるものの、インではスコアがまったく動かなくなりました。今大会ではトーナメントリーダーとなるとスコアが伸びなくなる傾向があり、10番をバーディとしてリーと並んでトップに立ったオーも、11番で3パットを叩いてボギー(10アンダー)。その隙を縫って最終組の前を回る武藤がアウト2バーディの後、14番バーディで11 アンダーとなってリーに並んだものの、あと1つのバーディが取れませんでした。
13番のバーディで復活したオーが、続く14番でもバーディを奪って通算12アンダーとしたものの17番でボギー。しかし、リーも同じ17番でボギーを叩き、最終組が最終ホールを迎えた時点で、オーが通算11アンダー、リーが10アンダー、一組前の武藤が11アンダーでした。
18番はバーディ奪取率が高く、イーグルのチャンスもあるだけにプレーオフや逆転劇の可能性もありましたが、武藤の1.5メートルのバーディパットはカップに蹴られてパー、リーも2パットでパー、オーだけが3オン後の1メートルのバーディパットを沈めて通算12アンダーでツアー初優勝を飾りました。

 一方、ワトソンは最終日も風と御殿場コースの難易度の高いホールに悩まされました。アウトのトップでスタートし、4番で初バーディを奪うものの9番でボギー。11番から13番まで3連続バーディでようやくエンジンが掛かったかに見えましたが、14番の「手前6ヤード、左4ヤード」という池を越えてすぐに立つピンに対し、「一つでも上に行きたかったのでギリギリに越えるクラブを選んだ」という第2打がラフを転がって池に落ち、ダブルボギーを叩くことに。前日の順位のまま24位タイで競技を終えました。

マスターズチャンピオンも屈した、御殿場コースの難易度と加藤俊輔マジック

 今大会ではハイレベルの優勝スコアとなることが予想されていましたが、終わってみると、パーオン率1位(79.17%)で最もステディな選手はオーでした。オーは両こぶしを顎に当て、少年のようにはにかみながらツアー初優勝の喜びに浸り、同じ最終組を回った恩人のハン・リーらの手荒い祝福にも笑顔で応えました。オーは「自分のゴルフにこだわって4日間やれたことが勝利につながったのだと思います。自分のプレースタイルはとても保守的で、フェアウェイにティーショットを打って、そのあとグリーンに乗せるというもの。かつてはドライバーを遠くへ打とうとしていたもののOBも多く、考え方を変えて、バーディを取れるところに打つスタイルに変えました」と語りました。
御殿場コースの戦略性と加藤俊輔マジックに翻弄された優勝候補が多い中、オーだけが手堅い自分のゴルフを貫いたことで、初優勝を掌中に収めることができました。

 そして、「良い日もあれば悪い日もあるのがゴルフ」とさっぱりとした表情で語りながら、一抹の悔しさを滲ませたワトソン。「このコースのグリーンはオーガスタや全米オープンの会場と同じくらいに速い。ギャラリーや運営も素晴らしく、チャンスがあればまたチャレンジしたい」とコースを後にしました。
 天候と風の影響で徐々に難易度を増した御殿場コースの4日間は、当初想定された優勝スコアを下回る、厳しくも実に見ごたえのあるものでした。誰にとっても参考となることが多い有意義な戦いだったといえるでしょう。

2014年度 三井住友VISA太平洋マスターズ
Final Round 成績表

順位 氏名 TOTAL 1R 2R 3R FR OUT IN 賞金
1 D・オー -12 276 = 70 68 68 70 36 34 30,000,000
2 武藤 俊憲 -11 277 = 71 68 69 69 34 35 15,000,000
3T 近藤 共弘 -10 278 = 71 71 69 67 34 33 8,700,000
H・リー -10 278 = 74 66 67 71 34 37
5 梁 津萬 -9 279 = 72 67 68 72 37 35 6,000,000
6T 高山 忠洋 -8 280 = 72 71 69 68 34 34 4,788,750
松村 道央 -8 280 = 77 67 66 70 37 33
山下 和宏 -8 280 = 68 71 70 71 38 33
呉 阿順 -8 280 = 71 68 69 72 36 36
10T 塚田 陽亮 -7 281 = 67 73 76 65 34 31 3,330,000
星野 英正 -7 281 = 73 70 70 68 34 34
李 尚熹 -7 281 = 70 73 69 69 34 35
宮里 優作 -7 281 = 70 73 67 71 37 34
H・W・リュー -7 281 = 71 70 68 72 36 36
24T B・ワトソン -3 285 = 67 70 77 71 36 35 1,260,000

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