思いの継承、そして昇華|Vol.7 18番ホールへの思い

プロトーナメントへの対応を図った近年のコース改修においては、“距離延長”は常道のメソッドと言える。しかし太平洋クラブが挑んだ御殿場コースの改修はこれを封印。地形上の制約もあったが、何よりも加藤俊輔氏が描いた「原設計」へのリスペクトを旨とし、改修を担当する設計家にリース・ジョーンズ氏を起用したことにもその強い思いが現れている。

実際にリース氏も「完成されたルーティング」と御殿場コースのオリジナルデザインを高く評価。唯一、7番ホールでグリーン面を改造した以外、今回の改修では基本設計の全てが引き継がれている。

コース内には重機も入り、深夜にまで及ぶタフな作業が続けられた。新生・御殿場コースは、改修に関わった全てのスタッフの思いと尽力の結晶なのである。

小さくて大きな改修

工期中にはコースの随所に重機が入る大プロジェクトであったが、改修を遂げた姿を前にすると、初見では「どこが変わったのか?」という印象を持つ。これぞリースデザインの醍醐味であり、“オープンドクター”と称され、オリジナルの設計を大切にしながら、小さな変化に見せつつ、大きな効果をもたらすという、彼の真髄が存分に味わえる懐深きフィールドとなっている。

18ホールの全てに繊細なリファイン作業が施されているが、ここではトーナメントでも数々のドラマを生んできた名物ホール、18番PAR5の変化を通して、小さくて、大きい、“二律共生”の物語の一端に触れてみたい。

「ティインググラウンドで考える」ことを常にプレーヤーに要求するのが、リース・ジョーンズの流儀。そのためにはコース自体も明確なキャラクターを有していなければならない。

18番では左サイドのバンカーの存在が強調され、右サイドのバンカーと共に狭く絞られたフェアウェイは、チャンピオンティからちょうどIP(280ヤード地点)付近となる。高い林帯にセパレートされた御殿場コースは上空の風にもデリケートな配慮が必要で、風の強い日にはより難解な状況が待ち受けることとなり、冷静な戦略と同時に、ピンポイントで的を射抜く正確な技術が問われる。

バンカーの精査は、形状、深さ、そしてティインググラウンドからの視認性も含めて、何度も細かな調整が加えられていった。

一方、バンカーまでの飛距離を有さないプレーヤーにとっては、手前のフェアウェイは広く、存在感を増したバンカーの視覚効果にとらわれることなく、リラックスしてスイング。第2打のアングルを考え、左サイドのバンカーがプレッシャーにならないよう、幾分フェアウェイの右サイドにコントロールすることが理想となる。

18番ホール前半のもう一つのトピックは、右のフェアウェイバンカーの先にある右傾斜&急勾配のラフが高麗芝で整備されたこと。これによりいくらビッグドライブを放ったとしても、右方向へのミスショットは林帯の際(あるいは中)まで転がり落ちる確率が大いに高まった。このエリアにつかまると次打はフェアウェイに張り出した林が完全にスタイミーとなり、出すだけのショットに。プロだけでなく、飛距離のあるプレーヤーはティインググラウンドの位置によっては十分に留意しておかなければならない。
 
これはバンカー手前からセカンドショットを打つプレーヤーにとっても要注意。ティショットをフェアウェイ左にミスした場合は、目の前にバンカー、右も禁物というタフな状況に陥ることになる。

リスク&リワード

300ヤード超えのティショットで、左サイドのバンカーの先にあるフェアウェイを捉えたプレーヤーは2オンのチャンス。確かな技術と勇気に支えられたショットに与えられるリワードだ。
しかし今回の改修によってグリーン右側の池が奥まで延長。加えてグリーン周りはラフから綺麗に刈り揃えられた高麗芝に。グリーンからこぼれたボールは容易には止まらず、池まで転がり落ちるリスクも高まっている。

「三井住友VISA太平洋マスターズ」の最終日、例年通りグリーン下段の右端というピンポジションであれば、イーグルを狙ったショットが、わずかなミスでもボギーにつながることとなり、接戦の展開では逆転の可能性を大いにはらんだスリリングな舞台へと仕上げられた。

高麗芝に囲まれたことで、砲台グリーンとしての個性がより鮮明となり、しっかりとグリーンに乗せることが第一。下段のピンの場合、グリーン奥からのアプローチも完璧な距離感を出さないとピンには寄らない。

一方、グリーン手前約100ヤード周辺のフェアウェイは左サイドが大きく拡張されている。3オンが戦略のプレーヤーにとっては池のプレッシャーが少なくなり、ステディなショットの持ち主には、パーオンが計算できるホールとなった。
とはいえ、左サイドに入り過ぎると、拡張された池がよりプレッシャーとなる。安心感を与えながらも、マネージメントを怠ると試練が用意される、フェアなコースなのである。

そして、グリーンに臨むフェアウェイからは、全てのバンカーが確認できるようになっており、美しい景観がさらに磨き上げられ、迫力も増している。
美しさと同時に、形状、大きさ、深さ、細かくリファインされたバンカーは、一見フラットに見えるが、左足下りとなるロケーションが増え、より繊細な距離感のショットが求められる。

リスク&リワード、リワード&リスク。難解ではあるが、やみくもに難度が上がったわけではない。ラウンドがかなったゴルファーは、コースに立ちターゲットに向かうと、「全てのレベルのプレーヤーに、全てのショットで考えることを求める」というリース氏の言葉を実感し、リゾートコースとしての美しさでも輝きを増した緑の楽園に抱かれ、ゴルフの醍醐味、真の楽しさに触れることだろう。

次回の『思いの継承、そして昇華』は、「トーナメントの思い」を掲載いたします。