思いの継承、そして昇華|Vol.4「トーナメント」への思い」

「三井住友VISA太平洋マスターズ」の舞台として知られる「太平洋クラブ 御殿場コース」。そもそもが、このトーナメントを実施するために計画・開発されたゴルフ場で、まさに生粋のトーナメントコースといえ、その誕生の由来の通り、高い戦略性はもちろんのこと、ギャラリーの導線に至るまで、設計段階から「トーナメント」への思いが存分に盛り込まれている。

シグニチャーホールの最終18番ホールは、加藤俊輔氏の設計の初期段階では9番となっていたが、よりドラマチックな展開を考慮し、18番ホールに調整されたというエピソードもある。

RISK & REWARDS

今回の改修を担当した“オープン・ドクター”の異名をとるリース・ジョーンズ氏も、トーナメントには最大級のフォーカスを当てている。リスクとリワード、困難とチャンスの精神を基に、1ホールごとプロ選手の戦略を綿密に分析し、バンカーからフェアウェイのラインに至るまで、設計から造作工事が進む中、絶えず細かなアップデートが積み重ねられていった。

そしてトーナメントは「ショー」でもあると語るジョーンズ氏。トーナメント開催時の設定にも思いは及ぶ。
例えば、打ち下ろし・右ドッグレッグの6番パー5では、パー4での設定も想定し、林帯の高さから、バンカーの形状などが突き詰められている。
11番パー5でも同じような配慮がなされており、国際水準を念頭に、パー70、あるいは71という設定にも対応できる設計(仕立て)となっている。

また15番パー4は、ティーインググラウンドの位置によっては、1オンを狙いたくなる(狙わせる)、リスクとリワードを湛えたドラマチックなグリーン周りを構築。グリーン右手前にはバンカーを増設している。勇敢で正確なショットにはイーグルチャンスが与えられ、試合終盤の上がり3ホールを迎える前、勝負の行方にインパクトを与えるエポックな存在にもなることだろう。

名物ホールの一つ、2011年大会で石川遼選手がホールインワンを記録して大いに盛り上がった17番の池越えのパー3も、バンカー形状がリファインされたことで、難易度と景観の美しさの両面でポテンシャルを高めている。

フィナーレを飾る18番も、IP(第1打の落下地点の設定距離。280ヤード地点)付近の左サイドのバンカーと、フェアウェイ右サイドのシビアな右傾斜によってプレッシャーが強まり、2オンを狙う際にもタフさを増したグリーン周りのバンカーとウォーターハザードがさらなる脅威となり、最後の1打までスリリングなドラマが展開されることだろう。

共鳴する三者の思い

加藤俊輔氏の原設計に寄り添いつつ、トーナメントにおいてはさらなるドラマチックな要素を注入するリース・ジョーンズ氏の改修デザイン。その精度と熟成において大変有意義だったのが、トーナメントの質をトッププレーヤーの視点から高めるべく、監修の任を務めた松山英樹選手とのセッションであった。

改修中のコース上でも「マツヤマはこのホールのティーショットは、これまで3ウッドを使ってフェアウェイのここを狙っていたが、改修後はドライバーで攻めてくるかもしれない。そうなるとグリーン周りは〜」といったリアルなコメントを発していた。

松山選手自身も、米PGAツアーにおいて世界的な名コースを舞台にトップ選手たちと凌ぎを削る中、「憧れのオーガスタや、メジャーを開催するコースに準ずるトーナメントコースが母国日本にあれば、また、どうしたら日本のコースセッティングを世界レベルへ引き上げることができるのか」という思いを強くしていったという。
そんな折、「三井住友VISA太平洋マスターズ」で2011年のアマチュア時代(初優勝I)と、2016年、2度の優勝を飾った思い入れのある「太平洋クラブ御殿場コース」の監修を担うことになったのは、松山選手にとっても絶好のチャンスとなった。

「日本が世界に誇れる、世界文化遺産にもなった富士山がコースから見えるのは御殿場コースの特徴の一つであり、特にトーナメント開催時の紅葉と重なる富士山は絶景だと思います。こちらを舞台に、世界基準であると同時にフェアでチャレンジングなコース造りをテーマに熟考を重ね、コース設計家であるリース・ジョーンズ氏と協議してまいりました」とその思いを語る松山選手。

コース監修は松山選手にとって初めてのキャリアとなったが、彼が米ツアーで初優勝を遂げた「メモリアル・トーナメント」のホストである帝王ジャック・ニクラスは、その舞台である「ミュアフィールド・ヴィレッッジ」の設計を30代で手がけている。今回の御殿場コースにおけるアクションは、松山選手のキャリアにとっても意義深いものになることだろう。「貴重な経験ができたことを大変嬉しく思います。これまで私が世界のトーナメントコースでプレーした経験が少しでもお役に立てれば光栄です。世界レベルになった太平洋クラブ御殿場コースが改めて海外からも評価されるよう、私も適宜情報発信してまいりたいと思います」。

名匠・加藤俊輔氏の確かな原設計に、リース・ジョーンズ氏の奥深い叡智、そして日本が誇るヤングスター松山英樹選手、三者の思いが共鳴し、新たなる伝説が始まろうとしている。

次回の『思いの継承、そして昇華』は、太平洋クラブ 韓俊社長の思いを掲載いたします。