思いの継承、そして昇華|Vol.3「設計者リース・ジョーンズ氏の思い 後編」

1グリーン化を遂げた2001年以来の大改修が進む、「太平洋クラブ 御殿場コース」。11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」開催に向け、6月には造作作業がほぼ完了し、続いて芝の張替え作業が随時スタートしている。

改修の設計を担当したリース・ジョーンズ氏は、「オープンドクター」と称され、数々の世界最高峰の舞台を整えてきた。今回も「国際水準に通ずる、日本を代表するトーナメンコース」が目標であるが、ゴルフクラブの主役はあくまで日々、ラウンドを楽しむメンバー。リース氏もそれを何よりもの信条とし、プロに試練を与えるタフな設定を追求しつつ、コースで日々楽しむメンバーのために、時に厳しく、時に優しく、エキサイティングでエポックな舞台を創造している。

リース氏が各ホールに込めた思いは、「ティーインググラウンドに立ったとき、まずは一度、考える」というもの。トッププロから、アマチュアのローハンデプレーヤー、そしてアベレージゴルファーまで、「どこを狙うか、クラブは何にするか」、あらゆるレベルのゴルファーが考え、ゴルフというゲームの真髄を心底楽しむことができるように、濃密な配慮が折り重なるように散りばめられている。ミーティングやコース視察の際には「トーナメントにおいては」と並び、「メンバーに対しては」というフレーズも、ことあるごとに使われてきた。

■美しさ、難しさ、易しさ、全てを磨き、共生させるリース氏のマジック

ティーインググラウンドの位置が変更され、富士山を望む御殿場コースならではの美しい景観がより強調された10番ホール。左サイドを狙うのがベストルートだが、林帯がプレッシャーとなり、さらにIP(第1打の落下地点の設定距離。旧基準の250ヤードから今回の改修により現在のトーナメント基準280ヤードへ変更)付近のフェアウェイは絞られ、方向、距離、落とし所、全てにおいて正確なショットが要求される。

一方、250ヤード付近までのフェアウェイは拡張され、左サイドを攻めても、プレッシャーが軽減されるように計算されている。その代わりに、右サイドのバンカーはフェアウェイの右勾配との兼ね合いを測りながら、形状から深さに到るまで緻密にリファインされ、ハザードとしての効果を高めている。

池が絡むような、いかにもタフなグリーン周りだけでなく、広いフェアウェイに打ち出す第一打目から、こうした立体的な計算が尽くされ、コースでのチェックの際には現場責任者のブライス・スワンソン氏と共に、フェアウェイの前後左右を行き来し、何度もバンカーの線を引き直し、最良を目指した微調整が重ねられた。

もちろん、グリーンを狙うショットにおいても、深く「考える」ことは必要であり、ショットバリューがより一層問われてくる。全てのホール、グリーン周りは高麗芝に張替えられたことで、「よく転がる」ようになり、グリーンを外したショットは、バンカーや池へと導かれる確率が上がる(時には必至なことも)。

ただしグリーンの奥はラフが設定され、どこまでも転がっていくようなことはない。とは言え、ラフからのアプローチショットも悩ましげで、オーバーすればグリーン手前のよく転がる高麗芝が待ち受けることに。

■名物18番ホールもさらにドラマチックな「舞台」へと昇華

「三井住友VISA太平洋マスターズ」でも多くのドラマを生んできた18番ホールには、リース氏も強くフォーカス。「イーグルも狙えて、ボギーもある」という、ドラマ性を高めるための多種多層のギミックが用意され、最終ホールまで逆転のチャンスが潜む、エキサイティングな舞台に仕上げられた。

まずIP付近にあるフェアウェイ左サイドのバンカーは、ティーインググラウンドからの視認性を高め、より深くデザインされたことで存在感を増し、プレーヤーにとってプレッシャーとなる。加えてバンカーの逆側、フェアウェイの右サイドは高麗芝で整備された右傾斜の急斜面が設けられ、少しでも右サイドに外すとボールは林帯の間際、あるいは中まで転がる危険性をはらむ。そこからはグリーン方向に林が大きく張り出し、まずは出すだけというレイアップに。

グリーン周りのバンカーも形状、深さがアップデートされており、フェアウェイからは全てのバンカーが視認でき、正々堂々と存在感を示すことで、美しく、フェアで、タフな設定となっている。さらに18番グリーンといえば、ビーチバンカーでもおなじみの池。今回の改修でグリーン右サイドの奥まで拡張され、右サイドのピンポジションの場合は、二段グリーンと相まって、より正確な縦の距離感が必要となる。

難易度に磨きをかける一方で、グリーン手前100ヤード付近からのフェアウェイの左サイドは大きく拡張されたことで、3オンがメソッドのプレーヤーにとっては選択肢が広がり、安心感も増している。とはいえ、左サイドに行きすぎると、グリーン奥まで拡張された池が効いてくるといった具合に、安堵とプレッシャーが幾層にも重なり合う設計となっている。

リース氏は、トーナメントでは1ラウンド4~5打は難易度が上がることを想定している。グリーン周りの戦略性の向上により、アマチュアゴルファーにとっても当然、難易度は上がるが、前述の通り、プロのルート、アマチュアのルート、それぞれに響く設定が施されおり、あらゆるプレーヤーがゴルフの真髄を楽しむことができる。

厳しさと優しさが共生する、新生・御殿場コースの完成はもうすぐそこまで迫っている。

次回の『思いの継承、そして昇華』は、「トーナメントへの思い」を掲載いたします。