思いの継承、そして昇華|Vol.2「設計者リース・ジョーンズ氏の思い 前編」

昨年11月7日、「三井住友VISA太平洋マスターズ」開幕直前に発表された「太平洋クラブ 御殿場コース」の改修計画。
「国際水準に通ずる、日本を代表するトーナメントコース」へのさらなる昇華を目指し、1グリーン化を遂げた2001年以来の大改修が、今年秋の同トーナメント開催に向けて日々進んでいる。

開発当初からトーナメントの開催をミッションとしていた御殿場コースは、名匠・加藤俊輔氏の設計によって1977年4月に誕生。雄大な富士山を望み、地形のうねりと高低差を生かしながら、規律ある針葉樹林の中に展開される18ホールは、独自の美学を纏い、緻密に計算された確かなルーティングによって高い戦略性を湛える。

その秀でた「骨格」を継承しつつ、さらなる可能性を引き出すのが今回の大改修。設計を担当するリース・ジョーンズ氏は「オープンドクター」(全米オープン開催コースの改修・改善を7箇所手がける)とも称され、オリジナルの設計の長所を最大限に活かした改修を真骨頂とし、まさに適任といえる。

リース氏は、ゴルフコースデザイン界のレジェンドであるロバート・トレント・ジョーンズSr.を父に持ち、ジュニア時代はゴルファーとして競技にも出場。エール大学とハーバード大学で学んだ後、父親のもとで多くの実践経験を積み、1974年に自らのゴルフ場デザイン会社「リース・ジョーンズInc」を設立した。
独立後も着実にキャリアを重ねながら、1988年の全米オープン開催に際し、マサチューセッツの「ザ・カントリークラブ」の改修を手がけたことで、大きな注目を集めることとなる。全米オープン開催コースといえば、2008年、タイガー・ウッズが足を引きずりながらの死闘の末、プレーオフ(決勝翌日の18ホール形式)を制した舞台、「トーリーパインズ ゴルフコース」のサウスコースもリース氏によるリファインである。

リース氏は、全米オープンのみならず、全米プロ、ライダーカップ、ウォーカーカップ、プレジデンツカップといったメモリアルなビッグトーナメント開催コースの改修も多く手がけ、これまでに北米・海外で225以上のゴルフコースの新設・改修を行ってきた。
日本でもお馴染みのハワイ島の老舗リゾートコース「マウナケア ゴルフコース」は、父の設計コースを息子が改修を手がけるという、半世紀を巡る親子共演となっている。

■原設計のルーティングの素晴らしさに寄り添いながら

「太平洋クラブ 御殿場コース」が持つ「自然の地形にぴったりと調和したルーティング、そしてフロー(動き)の素晴らしさ」を強調するリース氏。道具の進化した現代ゴルフに対応すべく、御殿場コースの戦略性をより「強固」なものにすることが彼の目標である。

改修工事が進むコースを訪れる度に、ホール・バイ・ホール、自分の足で歩きながら、吟味・遂行を重ねていく泰然とした佇まいは、まさにドクターといった感で、思慮深く、優しげな表情ながらも、鋭い眼光でコースを見つめる。そしてティーインググラウンドの位置や方向、フェアウェイの広さ、グリーン周りの僅かな傾斜、バンカーの形状、深さに到るまで、現場スタッフと共に繊細なアップデート作業が繰り返されていく。

現場の責任者であるデザイナーのブライス・スワンソン氏と共に改修が進むコースに立ち、最良のプランによる、最良のコースを追求。

全てのホールがハイライトと語るリース氏だが、現場でのチェックを重ねる中で、パー3(4番、7番、13番、17番)のリファインについて「4つのホールは、どれもが欠点がなく完成されている」と強調。
また、7番ホールは今回の改修で唯一、新設のグリーンとなっているが、あくまで原設計のトーンに馴染むように配慮しつつ、リース流が表現されており、加藤俊輔氏とリース氏の流儀と美学が呼応し合う象徴的な場とも言える。
この新グリーンとの出会いもまた、プレーヤーにとっては楽しみの一つとなることだろう。

6月からは芝の張り替えがスタートし、造作作業は最終段階に入った御殿場コース。

次回の「思いの継承、そして昇華」は、「リース・ジョーンズ氏の思い 後編」を掲載いたします。